インターンシップのこんな内容
損益計算書上の税引後の利益は一定でも,売上債権の増加や仕入債務の減少によって運転資本が増加すれば,キャッシュフローを圧迫します(キャッシュフローが減ります)。
もし,この運転資本増加と設備等の維持・新規の投資額の合計が,税引後利益にノンキャッシュ費用を加算したものより大きければ(投資を抑制できない場合),銀行借入や株式発行をせざるを得ません。
もし資金調達の道が閉ざされれば,企業は倒産します。
また,どんなに売上が増加しても,売上代金を現金で回収して初めて儲かったといえるのであり,これがなくては倒産の危険が常にともないます。
運転資本という言葉を使いましたが,ここで企業に必要な資本とは何かを考えてみましょう。
企業がその活動を継続するためには,どれだけ資本が必要なのでしょうか。
それは,設備投資の結果である固定資産残高に加え,この運転資本(もしくは必要運転資本=WorkingCapital Requirements)の合計を賄うものがあればよいのです。
運転資本とは,売上債権に棚卸資産を加え,仕入債務や経費の未払金を差し引いたものです。
厳密にいうと,事業に最低限必要な決済取引用の現金預金が含まれます。
理屈の上では,固定資産に運転資本を加算したものがあれば,事業運営ができます6資金調達されたお金を事業に投下するという意味から,これを投下資本と呼びます。
また,事業に使用している資本という意味から,使用総資本とも呼ばれています。
この投下資本の増減が,キャツシュフ口一に大きな影響を与えます。
一方,企業はこの事業活動に必要な投下資本を,なんらかの形でファイナンス(調達)しています。
たとえ損益計算書上の利益が不変でも,運転資本の増加分をファイナンスできなければ,企業倒産となります。
ファイナンスの方法は,株主資本(払込資本金に利益の内部留保等を加算したいわゆるエクイティ)であったり,長期や短期の借入金であったりします。
これは,各企業の置かれた状況によっても異なります。
例えば,極端に健全経営を行っている企業では,ほとんど株主資本でのファイナンスを行っていますし,逆に固定資産ですら短期の銀行借入に依存するといった大変危険な企業もあります。
1990年代後半の金融不安時に,ある都銀が実質上倒産しました。
この時この都銀が貸し付けていたお金を回収する必要が発生し,同都銀をメインバンクとしていた企業は,他の銀行に借り換えをせざるを得なくなり,同都銀の地元経済の足を大きく引っ張りました。
金融市場が正常に機能していないと,無借金経営(余裕資金が借入金より多い企業も含みます)の企業でない限り,健全な経営を行っていても,銀行が資金を引き上げると言われた瞬間,倒産の危険が発生します。
もし他の銀行からの借り換えができなければ,まさに黒字倒産といった不幸に見舞われることになります。
黒字倒産の,面白い事例を見てみましょう。
C.P.Stickney氏のFinancial Statement Analysis−A Stra-tegic Perspective (財務諸表分析一戦略的視点)の第2章に, 1975年に倒産した米国の小売業グラント社の事例が取り上げられています。
同社は米国で17番目に大きな小売店であり,倒産時点で1200店舗8万2000人の従業員を抱え, 17億ドルの売上がありました。
そして1906年以来安定して配当の支払を続けており,同社の倒産は資本市場や金融機関を震憾させました。
グラント社は戦略的に郊外店舗の拡張を行い, 1969年から73年の間に369店舗を新たに開設しました。
ピーク時には1日15店舗を開設したこともあるそうです。
もう一つの戦略としては,中間所得層に高い品質で中間的価格を設定した商品を投入し,家具やプライベートブランドの家電製品等の新たな商品ラインを追加投入しました。
またクレジットカードのシステム導入も行ったそうです。
これだけ多くの店舗を持つに至った同社でしたが,与信管理や在庫管理の仕組みや,管理の実態に問題がありました。
各店舗のマネジャーは割賦期限を管理し,顧客に対して36ヵ月の割賦を与えていました。
また,彼らは在庫購入と価格設定の権限も持っており,自社倉庫やメーカーからじかに購入していました。
当時グラント社には,店舗間で互いの店に商品在庫がどれくらいあるかを調べるシステムがなく,この場合推測ですが,他の店舗に在庫して売れずにいる商品でも,それが他の店のマネジャーにはわからないので,追加発注を行うという非効率さにつながった可能性が大です。
また社員には業界でも高水準の給与を支払っており,ストックオプション制度や,マネジャーが売上と利益に応じたボーナスを受け取る制度もありました。
しかし,どうも在庫水準や売掛金回収に関する責任が店舗マネジャーにないようで,これが運転資本を増加させる一因になったのではないかと思います。
1974年にグラントの問題が根深いことが判明し,銀行からの緊急融資やトップの更迭を行い,利益の出ない126の店舗を閉鎖しました。
そして1975年1月に入り。
金利7500万ドル分が支払不履行となり,同年1月末の決算期に初めて1億7700万ドルの赤字を計上したのです。
赤字になったのですから,このケースは厳密には,黒字倒産ではないとのご指摘を受けそうです。
しかし,手元にある数字では,少なくとも1967年から問題が顕在化した74年までは黒字が続いていました。
ROEは, 74年に1ケタ台に落ち込むまでは2ケタ台を続けていました。
利益率も4%台から3%台で推移していたのです。
債務不履行の前の決算期までは黒字でしたから,黒字倒産といっても間違いではないと思います。
その後経営者が替わり,銀行融資も受けたのですが,供給業者がグラントの支払能力に疑問を持ち,商品仕入れ,特に迫りくるクリスマスシーズンの仕入れに支障をきたすこととなりました。
そして75年10月に会社更生法適用を申請したのです。
倒産の原因の一つは,運転資本の増加にあると思われます。
1970年までは100日を下回っていた棚卸資産回転日数が, 71年以降100日を超え, 74年には121日まで増加しました。
そして,棚卸資産回転日数と売掛金回転日数を足してそこから買掛金回転日数を引いた運転資本回転日数を計算してみます。
これは,商品仕入代金の支払から売上代金回収までの期間を意味し,キャッシュフロー・サイクルタイムとか,キャッシュ・トゥー・キャッシュサイクルと呼ばれるものです。
1967年には137日であったグラント社のキャッシュフロー・サイクルク不ムが,次の3年間は150日の水準で推移し,その後さらに増加の一途をたどり, 73年と74年にはそれぞれ, 175日, 191日となりました。
これが資金繰りを圧迫したことは確かです。
また積極的な店舗展開について,そのファイナンスをリースで行っていました。
各年度のリース資産額(将来支払うリース料の現在価値の推定値)をみると, 1972年から3年間は,毎年2ヶ月増と,積極的な固定資産投資が行われたことを物語っており, 74年のリース資産額は66年の倍となりました。
この投資によるリース料支払‘も,資金繰り圧迫の要因となったのでしょう。
ただし,リース料は経費として計上されていたため,この影響は利益にも表れていま七だ。
利益指標は健全ですが,オペレーティング・キャッシュフローは1970年以降ずっと赤字になっています。
運転資本管理を各店舗任せにし,かつ店舗マネジャーの評価(給与決定要因)に運転資本の効率性を含めず,また店舗間での在庫を融通しあうためのシステムがなかったことが倒産の一つの原因でしょう。
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